9.
「好きすぎて怖い」
そう言ってよしざーさんが涙を流す。
あーしはただそんなよしざーさんを抱きしめるしかできない。
ほんの少し、よしざーさんを抱いたことを後悔した。
いつかは高橋愛に戻るのに。
その時のよしざーさんの落胆を思うと胸が痛い。
泣くよしざーさんの髪を撫でているうちによしざーさんはねちゃった。
あーしは暫くよしざーさんの寝顔を見ていたけれど、居たたまれなくなってロビーに降りた。
電話をかけた相手は石川さんで、あーしは全部石川さんに話をした。
相手がよしざーさんだということ以外全部。
「どうしたらいいかわからん…」
『愛ちゃんは彼女のこと好きなの?』
「うん」
『女に戻っても?』
「好きだと思う」
『深い意味でも?』
「彼女が高橋愛に抱かれることを望むなら」
『一度つれておいで』
「え?」
『待ってるね』
「あかんて」
『なんで?会わせられない?』
「いや…わかった…明日の朝、連れていく」
もう逃げられない。
何からも、誰からも。
部屋に帰る。
よしざーさんは起きてた。
泣きそうな顔をしていた。
「どっか行っちゃったかと思った…」
「どこにも行かないよ、そばにいる」
嘘ばっかりついて。
でも、泣かせたくないんよ、よしざーさんを。
「なあ」
「ん?」
「俺ん家来ない?」
「いいの」
「うん」
ちょうど起きてるし…処刑宣言は早い方がいい。