あんなにメンバーとよく遊びに行ってた愛ちゃんが、急に行かなくなった。
どうしたんだろ。
恋人でも出来たんだろうか。
「そんなんやないよ」ってそれだけしかいってくれないし。
「絶対彼氏ですって」
亀が言う。
「それ以外ないですよ」
ってさゆまで。
気になってしょうがないじゃん。
そんなある日。
番組収録でスタジオに入った私たち。
愛ちゃんはさっきからずっと携帯を弄ってる。
なんかすごい真面目な顔して。
「ガキさん」
急に私を呼んだ。
「な、何?」
冷静を装う私。
「ちょっと席外すわ」
「え?」
「10分くらいで戻るから」
そう言うと愛ちゃんは私の返事も聞かず、楽屋から出て行く。
…彼氏って業界人?
悪いと思いながら、あとをつけた。
愛ちゃんが向かったのはベタなカメラ倉庫。
「どうしたんや」
優しい愛ちゃんの声が聞こえた。
覗き見た私の視界には、自分より背の高い女の子を抱きしめる愛ちゃんが飛び込んできた。
女の子は泣いていて…
愛ちゃんも泣いてた…。
私の記憶が正しければ、あの女の子は女性アイドルグループのセンターを張ってる子で。
「大丈夫や。あーしがついてる」
って。
女性アイドルグループのセンターを長年張るという共通項が二人を結び付けたんだろうか。
二人にしかわからない痛みや苦しさ。
それが愛ちゃん達を引き付けあった原動力なのは間違いなかった。
「終わったらうちおいで」
「うん…」
「ほーら、泣いたらかわいい顔がだいなしやで」
「愛ちゃんも泣いてるし」
そんなこといいながら微笑みあってる。
入り込めない壁を感じた。
負けた…。
深く愛ちゃんに突っ込むのはやめようと思った。
愛ちゃんの口から彼女の名前を聞きたくなかったから。