腫れた唇をアイスパックで冷やしながら帰る車中。

「吉澤さん、ごめんなさい」

急にこんこんが声をかけて来た。

「へ?」
「言っちゃいました」
「何を?」
「吉澤さんのケガ」
「誰に?」
「愛ちゃん」
「あら…」

愛ちゃんが必要以上に心配する姿が目に浮かぶ。

「愛ちゃん何か言ってた?」
「何時にこっち帰って来るん?って…」
「家まで来たりしてね」

冗談でそう言ってたんだけど。



「愛ちゃん?」

東京に着いて出口を出たところに
ファンの子達に混じって愛ちゃんがいた。

「何やってんの!」

あたしは慌てて愛ちゃんを自分の方に引っ張った。
ファンの子達が驚いてる。

「こんなとこ一人出来たらだめじゃん」
「だって吉澤さんが…」
「あたしが何?」
「ケガ…」
「あたしなら大丈夫」
「ちょっとよっちゃん、言い過ぎだよ」

ミキティが言う。

「だって示しがつかないだろ」
「でも愛ちゃん見てみ?」

愛ちゃんを見る。
泣きそうな顔してる。

あぁ…もう…。

「すいません、ここで帰っていいですか?」

スタッフに先に帰る了解を得る。

「愛ちゃん、行くよ」
「へ?」
「帰るよ」
「あ…はい!」

二人してタクシーに乗り込んだ。

「びっくりしたよ」
「ごめんなさい」
「送っていくよ」

あたしは愛ちゃん家の住所を告げた。

「あの…」
「ケガなら大丈夫」
「……」
「ほら」

あたしは愛ちゃんの方を向く。
愛ちゃんはあたしの唇にそっと触れた。

「少し腫れてる…」
「しゃあないよ、敵の頭と当たったんだから」
「心配させられてばっかり…」
「心配してくれなんていってねえし」
「ごめんなさい…」

アホだろ、あたし。
何悪態ついてるんだ。
そう言えば先週も心配かけたんじゃん…。



その日、あたしは自己管理の甘さからひいた夏風邪のせいで
38度台の熱があった。
新曲のプロモでラジオ局回りで、朝から愛ちゃんと小春と一緒だったんだけど、
熱のせいでコンディションは最悪だった。
でも小春の前でへろってるとこ見せられるわけもなく、
気ぃ張ってたんだ。
そしたらさ。


「吉澤さん、熱あります?」

移動中の車内で触れる腕が熱いからって、愛ちゃんが聞いて来た。

「あ…うん…」
「よっかかっていいですよ。寝れたら寝てください」
「大丈夫だよ」
「吉澤さん壊れたら私泣きますよ?」
「わかった…」

そんなやり取りのあと、その日はずいぶんと愛ちゃんにもたれて寝たんだっけ。



一週間で忘れるなんてどれだけ鶏頭なんだよ、あたし。
隣で下を向いている愛ちゃんの頭に手を置いた。

「心配かけてごめん」
「…」
「これからも心配かけるかもしんない」
「え…」
「そういうときは暖かく包んでくれれば嬉しいな。
わがままかもしんないけど」
「大丈夫です!ってかわがまま言ってください。
吉澤さん一人で戦わなくていいですってば」

真摯な目で見つめられた。
おとなしかった愛ちゃんがしっかりしたもんだ。
あたしは感慨深く愛ちゃんを見つめた。

「大人になったねえ…」
「最近ね、よく言われるんです」
「何て?」
「吉澤さんがリーダーになってからの高橋は成長したねって」
「それっていい意味にとっていいのかな」
「もちろんですよ」
「真面目な話しさ」
「はい」
「ミキティと愛ちゃんには感謝してるよ」
「そうなんですか?」
「二人がいなかったらもうあたし壊れてるかもだよ」
「あら…」
「これからもよろしくお願いします」

頭を下げるあたしに、愛ちゃんは首を横に振った。

「私はそんな上等な人間やないです。でも…」

そこまで言った愛ちゃんがあたしの手に自分の手を重ねた。
精一杯の勇気でしてくれたんだろう、手が少し震えていた。

「頼りにしてるよ」
「はい!」
「ぶっちゃけるとさ…」
「はい?」
「少し痛い」
「マジですか」

耳元で『キスしてくれたら治るかも』って言ったら、
おもしろいくらい耳まで真っ赤になった愛ちゃん。
大丈夫、愛ちゃんは十分あたしの癒しになってるよ。
もっともっと仲良くなりたい。
まずは、今日愛ちゃん家に寄ることから始めよう。


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