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そこに愛ちゃんはいなかった。
慌てて玄関に行くと愛ちゃんの靴がない。
時計を見ると夜中の三時だ。
何やってんだよ…。
あたしは外へ飛び出した。
行く宛もない彼女はきっと近くにいるはずだ。
「愛ちゃん!」
彼女は近くの公園にいた。
「バカ!身体冷えちゃってんじゃん!」
部屋着のTシャツのまま飛び出した愛ちゃんの身体が冷たい。
あたしは自分が羽織ってきた上着を愛ちゃんにかけた。
「赤ちゃんに響くよ?」
「いいの、もう…」
「愛ちゃん…」
「だって肌の色も目の色も違うんだよ?パパもいないんだよ?
相手3人だったから…あーしも誰がパパかわからん…」
「愛ちゃん、3人にまわされた…の?」
頷く愛ちゃん。
まじかよ…。
「あの日から…あーしの運命変わってもうた…。
あーしね、あれから帰ってきてすぐ、付き合ってた人と別れたの」
「そうなの?」
「男の人怖くなってもうて…エッチできんで…理由言えるわけもなくて…結局別れるしかなかった…」
あたし、一緒にいたはずなのに気がつかなかった…。
「やっと立ち直れたかと思ったら赤ちゃんて…。あーし、どうしたらええかわからん」
「愛ちゃん…」
あたしも何て言っていいかわからなかった。
「とにかく家に帰ろ?」
あたしは愛ちゃんの前に手を差し出した。
その手を一瞬躊躇しながらも握った愛ちゃん。
そりゃ一人は不安なはずだ。
あたしは心の中で決心した。