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次の日からあたしは朝ご飯を作り、
空腹になると気分が優れなくなるっていうからいつでも食べられるようなおむすびを弁当として作り、
買い物もあたしが行き、夜は愛ちゃんが寝付くまで愛ちゃんの手を握っていた。
それがあたしが愛ちゃんにできる精一杯だから。
仕事しながらはきつかったけど、
愛ちゃんが柔らかい笑顔で笑ってくれるからそれで疲れも癒されたから。
なのに…。
「よしざーさん」
一週間目、家に帰ったら愛ちゃんが話し始めた。
「どした?」
「あーし、産むことにした」
「決めたか」
「明日、事務所に話します」
「そっか。じゃああたしも」
「一人で大丈夫だから」
「でも…」
「一人で産んで、一人で育てるから」
「あたしがそばにいるって言ってんじゃん」
「同情でしょ?」
「同情なんかじゃないって。あたしなりによく考えて…」
「そんなん今だけがし。今は勢いで言ってても絶対よしざーさん後悔するに決まっとる」
「何でそんなことわかるんだよ」
「あーしとおったら、よしざーさん幸せになれん」
「何が幸せかなんかあたしが決めることじゃん」
「だって目に見えとる。絶対あーしのこと重荷になるて」
「わかったような口聞くな!」
「よしざーさんこそわかっとらん!あーしはよしざーさんの幸せを思ってる」
「あたしだって愛ちゃんの幸せ考えてるんだ。愛ちゃんはあたしのこと嫌い?」
「嫌いやったら抱いてって言わない。こうやって一緒にいたりもしない」
「ならなんで…」
「お願い…わかって…」
潤んだ目であたしを見る愛ちゃん。
あたしの目からも涙が溢れる。
「泣かないでよ…よしざーさん…」
「だってさ…」
「よしざーさんに泣かれるのが一番つらい…。せっかく決心したのに…」
そう言うと愛ちゃんは俯いてしまった。
ぎゅっと膝の上で握りしめた手が悲しかった。