13


その夜、あたしは愛ちゃんが寝てから外に出た。
行き先はミキティの家。
遅い時間だったけど、ミキティは「よっちゃんから来るなんて珍しいね」
って言いながら中に入れてくれた。


「で?なんかあった?」


入るなりミキティが言う。


「辛いんだ…」


そう声に出したら涙がぶわって溢れてきた。


「ちょっ…よっちゃん?」
「一人で背負いこむって言うんだ…」
「よっちゃん、話が見えない」
「愛ちゃんが…」
「愛ちゃんが?」
「一人で生きてくって…」
「え?」
「一人で赤ちゃん産んで、一人で育てるって…」
「は?赤ちゃんってまさかあの時の…」


あたしはいきさつを話した。
さっきの愛ちゃんとのやりとりも全て。


「なんで…なんでわかってくれないんだ…」
「よっちゃん、優しさの押し売りしてない?」
「押し売り?」
「愛ちゃんのそばにいる自分に酔ってない?」
「そんなことないさ。こんなに好きなのに…」
「好き…なの?」
「最初は義務感で抱いた。けど…今は愛ちゃんがそばにいないとあたしが落ち着かない」
「抱いたの?」
「事件のあったあの夜に…」
「その日だけ?」
「うん…。大事すぎて…触れたら壊れそうで…」


ミキティと話してるうちに気持ちがわかったかもしれない。
あたしの方が愛ちゃんを必要なんだ。


「よっちゃん」
「何?」
「伝えたの?」
「何を?」
「好きだ。大事すぎるほど大事だって」
「いや…」
「なのにぐだぐだ言ってるわけ?」
「ぐだぐだって…」
「好きって言葉、口に出さなきゃ伝わらないよ?」
「伝わらない…」
「当たって砕けてこい。砕け散ったら慰めてあげるから」
「ミキティ…」
「愛ちゃん、まだ二十歳だよ?一人がどれだけ辛いか…わかってるんでしょ?」
「ごめん、ミキティ。あたし帰るよ」


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