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事務所からはタクシーで愛ちゃんのマンションへ。
部屋にはいると愛ちゃんは放心したようにベッドに座り込んだ。
「愛ちゃん」
声をかけるとあたしを見た。
「お母さんに…来てもらう?」
愛ちゃんは首を横に振った。
「お母さんはなんにも知らんから…」
そうだよな…。
こんな状態の愛ちゃんみたら心配するよな…。
「よしざーさん…」
「ん?」
「あーしといるの嫌なら…」
「馬鹿っ!誰が嫌なんて言ったよ。あたししかいないんだよ?」
「わかってる。あーしにはよしざーさんしかいないがし」
「一緒にいるから」
「はい…」
愛ちゃんが受けた心の傷はあたしにはわからない。
だけど、せめて愛ちゃんに心からの笑顔が戻るまではそばにいてあげようって心に誓った。
あたしと愛ちゃんの二人での生活は、まるで恋人同士みたいだった。
一つベッドで一緒に寝て、朝は愛ちゃんがご飯を作ってくれた。
一緒に出勤して、一緒に帰って、夜食をつくるのはあたしだ。
本当に、四六時中二人だった。
これは、あたしにとっちゃありえないことで、でもためらいなくできてる自分がすごいと思った。
帰国してから一週間がたった。
愛ちゃんも時折笑顔がでるようになり、あたしもそれを嬉しく思っていた。
おそらくほかのメンバーは気がついてないと思う。
勿論、海外ロケを境に異常に仲良くなったから、何があったの〜なんて聞かれたりもしたけれど、
「語り合ったんだよ」で済むレベルの話だった。