事務所に行って、スタッフのデスクの上で見つけた娘。のDVD。
イベントVって書いてある。
内容を見るとメンバー別クローズアップバージョンだとか。
んー。
気になる。
ちょっとDVD見てくるってスタッフさんに言って会議室へ。
プレイボタンを押すといきなり涙を流す高橋が映った。
すげえなって思いながら暫く見てたらノックの音。
入ってきたのは高橋だった。
あたしがいるって聞いて入ってきたみたいなんだけど。
「…何見てんの…」
「たかはし」
「はずかしいやん…」
消そうとするから慌ててリモコンを取り上げた。
「すごいね、おまえ」
「すごい?」
「いきなりこんだけ泣けるなんてすげえよ」
そう言ったらいきなりめっちゃテレだした。
「何考えてたの?」
「言えん」
「なんで」
「言えんのー」
「教えてよー」
「いややー」
「教えてくれないとひーちゃん拗ねちゃうよ?」
「うぅ…」
真っ赤になって下を向く。
画面の中には号泣の高橋、あたしの隣にはテレる高橋。
なんか変な感じ。
「考えたら泣ける」
「なにを」
「……ざーさん」
「え?」
「よしざーさん」
「ん?」
「やなくて、よしざーさんのこと考えたら泣けるんやて」
真っ赤になりながらそんなことを言う高橋。
「…あたし、お別れなんか言わないよ?」
「わかってる。でももし言われたら…そう思ったら泣ける」
「そうなのか」
なんか無性にいとおしくなった。
右手を伸ばし高橋の髪に触れる。
すっかり大人っぽくなった笑顔をあたしに向ける。
何を言うでもなく、あたしは高橋を抱きしめた。
抱きしめて30秒もたたないうちにぐすぐすとあたしの腕の中で泣きに入る彼女。
「泣くの?」
「…ごめんね?」
「いや、別にいいけど」
「よしざーさんにぎゅーってされると自然に涙が出てくるんよ…」
あたしの胸で泣きたいなら泣きゃいいんだ。
他で泣かれるより全然いい。
「頼りにされてるんか?あたし」
「うん…大好き…」
素で大好きって言われて少し恥ずかしいけれど
恥ずかしいって感情すらもいとおしくて。
あたし、相当重症だな、こりゃ。