05:38度5分を平熱だと言い張るキミは。

秋ツアーのリハーサルに陣中見舞いに行った。
頑張るみんなを激励したかったからね。
まあ、きっとテンパってるリーダーの肩の力を抜いてあげたかったのが一番だけど。
ツアーまであと10日ほどになりリハも佳境に入っていて
スタジオの中もぴりぴりしたムードが漂っていて、
あたしはスタジオのすみからその様子をじっと見ていたんだ。

でも…
明らかに高橋の様子がおかしくて…。
元々汗かきな彼女だけど、それ以上に汗だくで
息の上がり方も激しくて。

休憩の声がかかる。
あたしは見慣れた高橋のタオルを手にとって彼女を迎えた。

「お疲れさま」

あたしの差し出すタオルを受け取る高橋は、やはり肩で息をしている。

「大丈夫?」
「え?」
「体調」
「大丈夫ですよ」
「調子悪そうだけど」
「そんなことないですよ」

笑顔で返してはくれるけれど、なんか解せなくて。

「ちょっと、外出よ?」

スタジオの外に連れ出すために握った手がすごく熱かった。


自販機そばの椅子に腰掛ける。
あたしは財布からコインを出し、水を買った。

「高橋」

あたしを見上げた彼女の額にペットボトルを宛がった。
気持ちよさそうに目を細める高橋。

「おまえ、熱あるだろう」
「ないですよ?」
「うそつけ」
「平熱ですってば」

頑固に言い張るから、あたしは彼女のおでこに自分のおでこをくっつけた。

「こんな熱い平熱があるかっての」
「……」
「あるんだろ?」

高橋はこくりとうなづいた。

「どれくらいあんの?」
「38度5分…」
「はぁ? マネージャーとかは知ってんの?」

今度は首を横に振る。

「あほか、おまえ。何考えてんの…」
「だって…平熱だもん…」

38度5分を平熱だと言い張る君。
気持ちはわかるけど。

「こんな汗一杯かいてさ、肩で息しててさ、平熱なもんか」
「いや…でも今、気ぃ抜いたら終わりまで持たないから…」

何も言えなかった。

「リハ終わったら泥のように寝ますから…」
「…わかった…。とにかく脱水症状にならないようにこれ飲め」

冷たい水を飲ませて。


それから?
最後までリハを見届けたよ。
心配でたまらなかったからね。
高橋はその日、最後まで弱音を吐くことなくリハをやり遂げたよ。
家にはあたしがタクシーで送り届けた。
他の誰一人として高橋の発熱には気づいてなかったからね。
自宅に入るなり玄関に座り込んでしまった彼女を
妹さんと寝室に連れて行って寝かせた。

妹さんに君のお姉ちゃんは偉いよといいながらね。
言い出したら聞かない頑固ですからと返す妹さんに同意したのも事実だけど。


本・漫画・DVD・アニメ・家電・ゲーム | さまざまな報酬パターン | 共有エディタOverleaf
業界NO1のライブチャット | ライブチャット「BBchatTV」  無料お試し期間中で今だけお得に!
35000人以上の女性とライブチャット[BBchatTV] | 最新ニュース | Web検索 | ドメイン | 無料HPスペース