12.
「愛ちゃん、食べれないんだって」
「…まじ?」
「よっすぃーのこと考えると食べられないんだって」
「そんな…」
「もちろんよっすぃーのせいじゃないよ。
波長があっちゃってるでしょ。だからだと思うよ」
梨華ちゃんが解説してくれる。
無論、梨華ちゃんはあたしたちの肉体関係は知らない。
でもシンクロしてるってのはわかる気がした。
愛ちゃんを見る。
不安そうな目であたしを見てる。
あたしは愛ちゃんの頭を撫でた。
「待ってて」
「うん…」
「必ず元気になって戻るから、待ってて」
「はい」
しっかりとした目であたしを見る愛ちゃん。
連れてきてくれた梨華ちゃんにも感謝の言葉を言ってその日は別れた。
二日後、メンバーみんなとやってきた愛ちゃんはめちゃくちゃ泣いてて、
美貴ちゃんにしっかりしなさいって怒られてた。
あたしはみんなのところへお礼を言いに行った時に、そんな愛ちゃんを軽く抱きしめた。
翌日、あたしは仕事に復帰した。
「ちょっと遅くなる」
あたしは母親に告げる。
「仕事?」
「いや、愛ちゃんとこ」
「あぁ」
母親も愛ちゃんの号泣を見てるから、いってらっしゃいと送り出してくれた。
そしてその日の仕事終わり、あたしは愛ちゃんちに行ったんだ。
玄関の鍵を開け、入るなり愛ちゃんが抱きついてきた。
「何?どうした?」
「わかんない…でも、こうしたいの」
「わかった」
愛ちゃんがしたいようにさせてあげよう。
あたしだって人肌恋しいし…。
玄関先でずーっと抱き合ってた。
すすり泣く声が聞こえたけど、聞こえないフリして。
「愛ちゃん」
「…はい」
あたしを見上げる愛ちゃん。
この目が大好きだ。
「愛ちゃんがいてくれてよかった…」
「あーし、そんな上等な人間やないよ?」
「ううん、こうやって抱きしめる相手がいる。それが幸せ」
「そう?」
あたしは愛ちゃんを抱きしめたまま深呼吸する。
鼻の奥がつんときた。