9.

居間であたしは愛ちゃんを後ろから抱きしめた。
だってまっすぐに瞳見つめられたら話せなくなっちゃうよ。


「…よしざーさん?」


あたしの雰囲気を察して愛ちゃんも素に戻る。


「春にさツアーあるじゃん」
「うん」
「ツアー終わったらさ、毎日会えなくなるなぁなんて…」
「え?」
「あたしさ、卒業…」
「やだ!!」
「愛ちゃん…」
「ごめんなさい。でも…せっかく仲良くなれたのに…」


そう言って愛ちゃんは黙ってしまった。
あたしの手前、泣くのは我慢しているんだろう。
小さく震える背中が切なかった。


「愛ちゃん…当事者のあたしが言うのもなんだけど…泣いて…いいよ」


過去何回も経験している卒業。
あのときあたしにも泣いていいよって言ってくれる人がいたら少しは違ったかもしれない。
泣いていいって言ったから、愛ちゃんは両手で顔を覆った。
すすり泣く声が聞こえる。

結局その日は愛ちゃんはずっと泣いていた。
目、腫れるよって言っても泣きやまず、
ご飯も喉を通らないみたいで全く食べず、
ただ部屋の隅で膝を抱えて涙を流し続けてた。
あたしはどうすることもできずにただ側にいた。
やがて目は腫れ、声も枯れ、挙げ句に体調を崩し気持ち悪いって言い始めた愛ちゃんを放って帰れるわけはなく、
この日も泊まることにした。


「愛ちゃん何か食べに行く?」
「いらない…」
「でもなんか食べなきゃ」
「気持ち悪いから…」
「じゃああたしも食べない」
「あかんて…」
「愛ちゃんが食べないならあたしもいらない」
「…わかったから…食べるから…」


あたしたちは昼に作ってたべなかった料理を暖めなおした。
なかなか進まない愛ちゃんの箸。
あたしがじっと見ると慌てて口へ運ぶんだけど、
飲み込めなくて涙目になってて、最後には水で流し込んでる。
だけど結局最後は逆流してきちゃったみたいでトイレにかけこんで…。
慌てて背中をさすりに行って…。
あたしの卒業だけでなんでこんなに…。
あたしも真希ちゃんの時に体調崩しちゃったけどさ、
それはあたしが真希ちゃんを愛し……
え?まさか愛ちゃん……。
だけど何も言わずに泣き続ける愛ちゃんの心まで読めるわけでなく、
あたしは愛ちゃんの気持ちをはかりかねていた。

夜中も愛ちゃんは何回も気持ち悪いって言ってトイレに立った。
段々吐くものがなくなってー最後には胃液まで吐いて…。
見てるのが辛かった。
ただ「ゴメンね」って、そう言い続けるしかなかった。

夜が明ける。
愛ちゃんはとてもじゃないけど仕事のできる状態じゃなく、
あたしが欠席の電話をマネージャーに入れた。
あたしが仕事に行くときに寂しそうな顔をするのが切なくて、
また帰りに寄るからと言い聞かせていってきますを言った。

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