『麻琴、今すぐきて しんどい』



いきなり愛ちゃんから来たメール。
なによ。なんなのよ。

『今からって 今から?』
『そや』

むぅ。

お母さんに「愛ちゃんとこ行って来る」って告げてタクシーに乗った。



「愛ちゃん、なに?」

ドアを開けてくれた愛ちゃんに一応抗議。

「麻琴のせいやざ」

無駄なのはわかってるんだけどね。

「麻琴のせいで風邪が治らん」
「何で私のせいなのよ」

そりゃ私の卒業発表直後から風邪ひいて、大阪でのライブ挟んでまだ治ってないみたいだけど
それって私のせいなのかい?

「麻琴のせいで寝れんのやもん。麻琴のせいやざ」

ずっと微熱が続いてて、鼻声と喉の不快感も治らないらしくて
今日の愛ちゃんはかなり不機嫌だ。

「とにかく入れて?呼び出しといて玄関先はないでしょ?」
「わかった」

やっとのことで部屋に入れてくれた愛ちゃん。
部屋はいつも以上に散らかってる。
それを見てお母さんが今福井なんだろうなって推し量る。

「お母さん、実家?」
「うん」
「風邪ひいたからきてって言えばいいのに」
「そしたら心置きなく泣けん」
「泣くの?」
「泣いてる」
「あら」
「麻琴のせいや」
「ごめん」

それしか言えなくて、私はごまかすかのように部屋を片付ける。

「愛ちゃん、隣の部屋行っといて?」
「なんでや」
「埃たつからくしゃみとか咳とか出るでしょ?」
「出ん」

軽くアレルギー体質なのは私でもわかるのに、この人は違うって言い張るんだよね。

「ほら、いきなさい」

手を引っ張って強制移動しようと…

「バカマコ!!」

抱きつかれちゃった…。

「愛ちゃん? 片付けできないよ?」
「せんでいい」
「でもさ」
「なんでや」
「へ?」
「何で置いていくん」
「愛ちゃん…」
「麻琴といる時間が好きやった。麻琴といると癒された。
なのに…なんで?」
「ごめんね?」
「報告が麻琴の口からじゃないなんて悲しすぎる…」
「コンコンから聞いてたんじゃなかったの?」

あの日、事務所に来た愛ちゃんはすでに怖い顔してたから、
てっきり知ってるものだと思ってた。

「よしざーさんから聞いた」
「吉澤さんから?」
「あーしのこと心配してくれて、電話してきてくれて知ったんよ」
「あぁ…吉澤さんはリーダーだから一足先に知ってたのか…」
「うん。で、あーしは麻琴から聞いてるものだと思ったらしく電話くれたんよ」
「そっか…」
「あーしが知らんかったもんで、よしざーさんから聞いて動揺してもたら
よしざーさん事務所行くのにわざわざあーしの家まわってくれた」

だから、二人一緒に来たのか…。

「でも、あーしは麻琴に来てほしかった」
「ごめん…でもね?」
「わかってる。よしざーさんにも言われた。
こういうのは…事情あるんだから…麻琴を責めたらだめだよ?って言われた」
「そっか…」

私の胸に顔をうずめたまま、愛ちゃんはずっと話している。
身体はほんのりと熱く、ハスキーな声が痛々しい。

「愛ちゃん、もう寝た方がいいよ」
「いやだ」
「わがまま言わないで? 風邪こじらせちゃうよ?」
「いいもん」
「よくないよ。来週ツアーラストでしょ?」

愛ちゃん風邪ひどくなると声でなくなるんだから。

「麻琴」
「なに?」
「お願い聞いてくれたら寝るわ」
「いいよ。なに?」
「チュウして」
「うんいいよ…って、ええ!!」

愛ちゃん今、なんていった?

「早よして」

私は観念して愛ちゃんのほっぺに…

「ちがう」
「へ?」

寸でのところで止められた。

「口に決まってるやろ」
「…まじ?」
「大まじ」

言い出したら聞かないのわかってるし、観念するしかない。

「わかったよ…。目、つぶって?」
「ん…」

目を閉じた愛ちゃんの唇にそっとくちづける。
その瞬間に抱きすくめられて濃厚なキスになってしまう。

…てか…
愛ちゃんの唇、美味しいかもしれない…。


「ごちそうさま…」

思わずそういっちゃった。

「なんやそれ」
「だって…」
「まあいいけど」
「ちゃんとお願い聞いたんだから寝てよ?」
「わかった」

ベッドに愛ちゃんを連れて行って布団をかけてやる。

「麻琴…」
「なあに?」
「一緒に寝よ」
「はぁ?」
「お願い…」

さっきまでの威勢のよさはどこへ行ったんだか、
なみだ目で私を見上げてくる。

「わかったよ…」

お邪魔しますって言って隣に入る。

「腕枕して?」
「うん」

私が愛ちゃんの頭の下に腕を入れると、愛ちゃんがむぎゅって抱きついてきた。

「こうやって寝るの?」
「こうやって寝るの」
「襲っちゃうよ?」
「ええよ」

それでも戸惑っていると、愛ちゃんは私の手を自分のパジャマの中に導いた。

「ちょっ、愛ちゃん?」
「今は一分一秒でも多く麻琴と触れ合いたいんよ。わかって?」
「愛ちゃん…」
「これから先…いつでも麻琴を思い出せるように…」
「…わかったよ」

私は恐る恐る手を動かした。

「んふ…」

愛ちゃんの口から熱い吐息が漏れる。
私の指使いだけでころころとかわる愛ちゃんの表情にそれからは夢中になった。
私でもこんなに愛ちゃんを悦ばせてあげられるんだね。
なんか癖になりそうだよ。

気がついたら2時間もたっていて、愛ちゃんも汗でぐっしょり。
って、やばいじゃん!

「愛ちゃん、汗拭かなきゃ! 風邪ひどくなっちゃうよ」

私は慌ててタオルを取りに行く。

「もう遅いわ」
「え?」
「なるもんならもうなっとる」

そんな開き直って…。
私は大急ぎでタオルで愛ちゃんの髪と身体をわしゃわしゃと拭く。

「麻琴」
「ん?」
「もっとやさしく拭いてや」
「だって早く拭かなきゃ…」
「そんなわしゃわしゃやったら頭痛い」
「うそぉ〜ん」

いきなり愛ちゃんの携帯がなる。

「あ、よしざーさんや。…もしもし」

って出た瞬間に咳き込む愛ちゃん。
なんちゅうタイミングだ…。

「はい…はい…大丈夫です。熱は…ありますけど…。
麻琴がいます。はい…わかりました。また明日…おやすみなさい」

やばい…
非常にやばい…

「麻琴? 麻琴??」
「怒られる…」
「おーい、麻琴?」
「吉澤さんに怒られる…」

マジでびびってたら愛ちゃんに爆笑された。

「お願い!ジキニン飲んで早く寝て!!」

〜fin〜
本・漫画・DVD・アニメ・家電・ゲーム | さまざまな報酬パターン | 共有エディタOverleaf
業界NO1のライブチャット | ライブチャット「BBchatTV」  無料お試し期間中で今だけお得に!
35000人以上の女性とライブチャット[BBchatTV] | 最新ニュース | Web検索 | ドメイン | 無料HPスペース