12 世界をとめるくらいの威力

2007年4月28日よこすか芸術劇場
アンコールでステージに飛び出す。
気持ちよく歌い踊って、さあ、MC。
……
あれ?
あたしの隣に来るはずのメンバーが来ない。
舞台上を見回すも姿がなくて、舞台袖を見た。
あたしの目に入ったのは、そこに座り込む高橋の姿と
あたしに向かって大きく腕で×を作るスタッフの姿だった。
なにがあったんだ?
高橋はどうしたんだ?

心臓がどきどきした。
とりあえずあたしはどうしたらいいんだ?
落ち着け! あたし。
×ってことは高橋は出れないってことだよな?
ものすごい短時間に頭の中が回転する。
とりあえずMCはじめなきゃ。
あたしはミキティに目で合図を送った。

みんながMCしている間にもチラッと袖に目をやる。
スタッフが紙に事情を書いてあたしに出していた。
『高橋は足の怪我で出れないから、吉澤、次の曲パートフォローよろしく』
まじかよ…。そんなにひどいのか?
頭とか打ってないよな?
ダメだ。いらないこと考えるなあたし。


ちゃんと曲フォローはした。
でも、ステージが終わる頃にはもう、病院に行ったらしく高橋は楽屋にいなかった。
あたしが不安を顔に出したらダメなのはわかってる。
だから決して顔には出さない。
だけど…。
心臓が痛かった。
こりゃ、あたし殺すのに刃物も拳銃も要らないな。
高橋の怪我一つで、あたしの中の世界を止めるくらいの威力だ。

夜の部が近づいても高橋は帰ってこなくて、
あたしとガキさんが呼ばれて、高橋の歌パートのフォローを言い渡された。

「あの…」
「ん?なんだ?」
「高橋と話したいんですけど…」

このままじゃ歌えないって思った。
あたしだってそんなに強くない。

「なんで?」
「安心したいんです。ケガしてから顔も見れてないし…」

それから少したって、高橋から電話が来た。
しきりに迷惑かけてスイマセンって謝る高橋に、
捻挫ですんでよかったよ、とあたしは返した。


その時、涙が出そうだったのは誰にも内緒。




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