空港から市街地に向かうバス、あーしは電話をかけた。
日本の空港で急遽レンタルした海外用の携帯を取り出す。



「もしもし」
『おう』
「今着いた。バスでホテルに向かってるよ」
『そっか。飛行機大丈夫だった?』
「うん。大丈夫」
『みんなは?』
「元気だよ」
『そっか。がんばれよ』
「うん、頑張る。また電話するね」
『うん、でもあんまり無理すんなよ?』
「あーしが声聞きたいから」
『わかったよ。じゃあ待ってる』


電話を切ったらメンバーがニヤニヤとあーしを見ていた。


「愛ちゃん、彼氏?」

ひそひそと聞いてきたのはれいな。

「ちがうよー」
「えー違うの?」
「よしざーさんやで」
「吉澤さん」
「そ」
「え?吉澤さんとラブラブなんですか?」


いや、だから、違うってば、さゆ。


「そんなんやないよ。リーダー経験者同士いろいろあるんやて」
「あやしいー」


十数時間前まであーしはよしざーさんと一緒にいた。
韓国から帰ってきて、そのまま大宮での後藤さんのライブに出かけて。
後藤さんがハローを卒業するのは本人の口から聞いて知っていた。
だからどうしても見に行きたかった。
スケジュールはすごいタイトだったけど、あーしは無理を言って大宮に連れて行ってもらったんよ。
そこで会ったよしざーさんは、終始口数が少なかった。
ライブが始まる前からどこか遠くを見ていて、
あーしと目が合っても「おぅ、高橋」って弱々しく笑っただけ。

ライブはよしざーさんと隣で見たんやけど、よしざーさんはぎゅっと拳をひざの上で握ってた。
微動だにせず後藤さんをじっと見ていた。
まるで全ての動きを目に焼き付けるかのように…。
ライブ中はそんなよしざーさんに話しかけられんかった。



「さあ、帰るよ」


ライブが終わって、マネージャーに声をかけられた。


「あ、あーし残っていいですか」
「え?」
「ちょっと、話あるんで」
「でも…」

渋るマネージャーに、よしざーさんのマネージャーが「俺が送るから」といって
助け舟を出してくれた。


「よしざーさん」


思い切って声をかけた。


「ん?」
「このあと後藤さんとどっか行くの?」
「いや、行かないよ」
「あーしとご飯行きませんか?」
「え?」
「だめ?」
「あ、い、いや。行こうか」


このまま、笑顔のないままよしざーさんを家に帰したくないって思ったんよ。
店の前まではよしざーさんのマネージャーが送ってくれた。


「高橋ももう大人だから、自己責任でちゃんと家に帰りなさい」
「はい」
「明日台湾だろ?遅くならないようにな」
「うん。わかった」


元々娘。のマネージャーだったから、あーしの性格もよくわかってくれてて
そういってマネージャーは帰っていった。


「行こ?」


あーしは改めてよしざーさんに向き直ると、よしざーさんの腕を掴んだ。


「ん。行こう」



結局その日は2時過ぎまで飲んでた。


「送ってく」
「え?もっといたい」
「だめ」
「でも…」
「高橋の身体が心配だから。だからダメ」
「あーしなら大丈夫」
「今日韓国から帰ってきたばっかりなんだろ?んで明日から台湾?
疲れてないわけがないだろ」
「大丈夫なのに…」
「おまえ、痩せただろ。声飛ばしたらなかなか治らないし。
身体疲れてるんだって」
「そうなのかな…」
「そうなんだって。だから今日はもう帰れ」
「うん…」
「あたしなら大丈夫だから」
「え?」
「あたしが元気ないから誘ってくれたんでしょ?」
「……」
「でももう大丈夫。高橋と喋ってたら元気出たよ」
「ほんと?」
「うん。高橋の笑顔見てたら元気出た」

見上げたよしざーさんはいつもの笑顔に戻っていて。
あーあ…なんか…結局よしざーさんに気を使わせてもうた…
そう思ったら涙が溢れそうになって、あーしは俯いたんよ。

「高橋?どうした? 気持ち悪くなったんか?」

慌ててよしざーさんが覗き込んできた。

「って、泣いてんの?? あたし何か悪いこと言った?」
「ううん…あーし…あーし…」

泣きたくないのに涙腺が言うこと聞かなくて涙が溢れてくる。
よしざーさんはそんなあーしの涙をそっと拭ってくれた。


「守りたかったのに…」
「守りたかった?」
「よしざーさんを…」
「あたしをか」
「出来んかったけど…」
「ううん。助けられたよ」
「ほんと?」
「あのまま帰ってたら、きっと一人で今頃やけざけ飲んでた。
でも高橋と飲んだから美味しいお酒だった」
「あーしも楽しかった」

よしざーさんがあたしのおでこにこつんって自分のおでこをくっつけた。

「送っていく。だからもう寝ろ」
「はい」

手を繋いで大通りまで歩く。
どちらからってのはなかった。
自然と二人で手を出した。

「よしざーさん」
「なに?」
「電話してもいい?」
「電話?」
「うん。台湾から」
「おぉ。いいよ」
「じゃあ電話するね」




だから
「いまからミニライブだよ」
「いまから現地のラジオに出るの」
「おやすみ」
「おはよう」
「記者会見行ってくるね」
「握手会行ってくる」
一杯一杯電話した。



そして台湾2日目の夜。


『高橋からの着メロかえたんだ』
「なににしたの?」
『元気+』
「おぉ」
『♪やっぱりあなたが下さる元気〜』
「……え?」
『高橋からの電話が楽しみになってた』
「……まじ?」
『って、泣くな?』
「やって、うれしいんやもん」


ぽろぽろ涙が止まらなくて、電話を握り締めて泣いた。
よしざーさんは電話の向こうで泣くなよぉって困ってたけど、
飛び切りの一言をくれた。


「あたし、やっぱり高橋のことが大好きだ」


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