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「よしざーさん」
「ん?」
「くっついていいですか?」
「もちろん」
あたしがそう言うと、愛ちゃんはぎゅうっとあたしに抱きついてきた。
あたしは愛ちゃんの柔らかい髪を指で梳いた。
「あたしがついてるから。だから大丈夫だよ」
「ダメです」
急に愛ちゃんが顔をあげる。
「へ?」
「よしざーさん一人で背負い込まんといて下さい」
「背負い込んでないよ?」
そういうあたしに愛ちゃんは首を横に振る。
「あーしが楽日まで身体もったのはよしざーさんがあーしの分までいろいろ背負い込んでくれたから」
「そんなことないよ」
「そんなことあります」
実際、あたしがしたことって言えば、毎日愛ちゃんといっぱい話すようにしたことくらいだ。
あたしと愛ちゃんは敵役だから、舞台裏でも話さないといつまでも気持ちがオフにならないから、
オンオフの切り替えをするために意識して話すようにしたんだ。
それのことかと思ったんだけど…。
「それだけやないですよ」
「あたし、覚えないよ?」
「『高橋一人にだめ出ししないで下さい』」
「あぁ」
「言ってくれたんですよね?『あたしはリーダーとして知る義務がある』って」
「そういえばあったねえ」
「それであーし、だいぶ気持ちが楽やったんです」
そういいながら愛ちゃんがあたしの頬にふれた。
「そのかわり、よしざーさんが痩せてもた」
「大丈夫だよ」
今度は愛ちゃんがあたしの髪を撫でた。
「背負い込まないで?」
「うん…じゃあさ」
「なんですか?」
「ついてるからって言わないよ」
「はい…」
「そのかわり一緒にいよ?」
「はい」
愛ちゃんは安心したように目を閉じた。
あたしも、明日に備えて早めに目を閉じた。