7
カーテンコールが終わる。
最後に麻琴と愛ちゃんが残って、愛ちゃんが麻琴を送り出す。
くしゃくしゃの泣き顔で戻ってくる麻琴をみんなで出迎える。
誰も彼もが泣き顔だ。
舞台の上では再度愛ちゃんが深々と客席に頭を下げている。
その顔は涙でくしゃくしゃだけど、きちんとやり遂げている。
愛ちゃんが袖に戻って…
…っと!!!
真っ先に出迎えてあげようと愛ちゃんに近づいたら、
愛ちゃんがあたしの腕の中に倒れこんできた。
「愛ちゃん!!」
あたしが思わず叫んだから、みんなが振り返った。
「愛ちゃん、大丈夫?」
愛ちゃんは喋ることもできずにただ頷く。
その目はあたしを見ているんだけど
どうも焦点が合わなくて不安になる。
座り込んで愛ちゃんを抱きしめるあたしに
他のメンバーもただならぬ気配に近寄ってきた。
「吉澤さん、愛ちゃん大丈夫なんですか?」
聞かれてもあたしもわかんないよ、そんなの。
肩で息して浅い呼吸を繰り返す愛ちゃんに、あたしはただおろおろするばかりだ。
「リーダーがそんなんでどうするの」
ポンって後ろからマルシアさんに背中を叩かれた。
「マルシアさん…」
「大丈夫よ。緊張の糸が切れただけ。暫く休んでたら落ち着くはずよ」
「そうなんですか?」
「愛ちゃん、頑張ったもの」
「そうですね…」
マルシアさんは優しく愛ちゃんの頭をなでた。
「愛ちゃん、ゆっくり息吸ってゆっくり吐いてごらん?…そうそう。その調子」
愛ちゃんはマルシアさんに言われるように深呼吸をする。
途中何回も咳き込みながらも、どうにか息遣いは落ち着いてきた。
「すいません…ご心配おかけしました…」
自力で立ち上がった愛ちゃんは周囲に頭を下げた。
「愛ちゃん、行こ?」
「うん…」