うそやろ?
ありえん!
鞄の中くまなく探した。けどないんよ!
あーあ…寝られへんの決定やわ。
行きの車中から凹みまくった。

「愛ちゃん?どうかした?」

麻琴が聞いてくれた。

「タオル忘れた」
「タオルってあのあかいやつ?」
「うん」
「あら…」

仕事終えてホテルに帰ったら麻琴が美貴ちゃんとあさ美ちゃんを連れて遊びに来た。
何も言わんけど麻琴なりに気をつかってくれてるんやろう。

「ちーっす」

少し遅れて来たのは吉澤さん。
吉澤さんは美貴ちゃんからビールを受取ると、あーしのベッドに腰掛けた。

「眠いの?」

吉澤さんがあーしに聞いてきた。
眠いんやけど、寝られへんわ…。
みんなが話すのをベッドの上で聞いてた。
この『眠いのに決定的に眠りに堕ちない』って状況は最悪かも。
うつらうつらするのに手が寂しくなってはっと目が覚める。
…うぅ…。



あら?
あるやん赤いタオル。
あーしは手を伸ばしてタオルを掴む。
そうそう、この手触りにこの匂いや。
…おやすみ、みんな。
あーし、もう起きてられんわ…。
……。



…ん?
…よしざーさん?
…へ?
なんで?
目が覚めたら目の前によしざーさんの顔。

「なんや?どないなっとるんー!」

思わず叫んだら、よしざーさんが目を覚ました。

「あ…おはよ、愛ちゃん」

「あーし…あれ?」
「いやあ、昨日帰れなくてさぁ」
「へ?」
「どうもタオルがわりにされたみたい」

……。
あーしは自分の手を見た。
…よしざーさんのジャージの裾をしっかり握って…。
「あー!!!」

うそやろ?うそやと言うて…。

「ごめんなさい!」
「あやまんなくていいよ」
「でも…」
「あたしのジャージの裾をさ、ぎゅーっと握って寝てる愛ちゃんかわいかったよ」
「うそぉ〜」

はぁーもう…。
顔があっついんやけど。
目の前のよしざーさんは妙にニヤけてるし。

「あんまりかわいかったから、おやすみのチューしちゃった♪」

…よしざーさん?
今何て?

「いやーん」
「え?いやなの?」
「あ、そやなくて」

わたわたなあーし。
でもな?よしざーさんのジャージ、すごい手触りよかったんよ。
いい匂いもした。
もし、今度またタオル忘れた時はジャージ貸してって頼もうかな。
もちろんよしざーさんつきで♪

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