1.


いよいよ明日はあたしの卒業式。
今日最後の仕事を終え、今は帰りの支度中。
いつもだったらうるさいくらいのメンバーなのに
今日ばかりは気持ち悪いくらい静かだ。
あたしは帰り支度の手を止めて控え室をぐるっと見渡す。
光井と小春は二人でこそこそと話してる。
れいなと重さんは明日の進行表を確認中。
絵里とガキさんはあたしを見ていたみたいだけど、目が合うとそらした。
ミキティはメール中。相手はあややかな。
あれ?高橋?
愛ちゃんは本当に部屋の隅っこで帰り支度をしていた。
うつむいてるから表情はうかがいしれなかったけど。

「おつかれさまでしたー」

明日の集合時間を確認し、それぞれが帰路に着く。

「吉澤さん、おつかれさまでした」
「よっちゃん、また明日ね」

口々にあたしと挨拶を交わし部屋を出て行く。
なのに愛ちゃんは…。

「高橋」
「…」
「愛ちゃん?」
「…」
「愛!」

普段呼んだこと無い下の名前の呼び捨てにやっとのことで愛ちゃんはあたしを見た。
そう。
愛ちゃんはあたしと目を合わさずに帰ろうとしてたんだ。

「おつかれさま」
「お疲れ様でした…」

やっとのことで絡んだ視線もすぐに愛ちゃんからそらす。
なんかむかつく。
あたしは今控え室にあたしと愛ちゃんしか居ないのをいいことに
ぐいっと愛ちゃんの腕をつかんだ。

「なんなのさ」
「え?」
「何で目そらすの」
「別に…」
「そういうのむかつくんだけど」
「ごめんなさい…」

あたし、おかしいよね。
自分の卒業コンサートなんてもちろんはじめてなわけで、
神経が高ぶってるのかな。
考えるより先に言葉がぽんぽん出てきちゃう。
ほら、愛ちゃん泣きそうじゃん。
やめろよ、あたし。

「よしざーさん…腕、痛い…」
「あ、ごめん…」

無意識で強く掴んでたらしい。
あたしが離したら、愛ちゃんが腕をさすった。

「ごめんさい。お疲れ様でした」

怯えた表情で愛ちゃんがあたしを見る。

「高橋」
「はい」

怯えないでよ、何もしないから。

「飲みに行こう」
「え?いつですか?」
「今」
「でも織田澤さんが今日は早く帰って休みなさいって…」
「寝れるわけ無いじゃん。だからアルコールの力借りるのさ」
「でも…」
「あたしとはいや?」
「いやじゃないです!」
「じゃあ行こう」

娘。在籍時はほとんどメンバーをあたしから誘うなんてことは無かった。
でも、もういいよね。
だって明日で卒業だから。


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