10.
「ひとみ、着いたぞ」
お父さんの声に目を覚ます。
やべ!愛ちゃんほっぽって寝ちゃってた。
慌てて隣を見ると、愛ちゃんはあたしを見てニコニコと笑ってた。
「ごめん、寝ちゃった」
「ううん、大丈夫ですよ」
「ごめんね」
「お母さんといっぱい話せたし、楽しかったです」
「げ」
お母さん、何はなしたんだろう。
二人ともニヤニヤしてるし。
てか、愛ちゃんも元気になったみたいだ。
顔色も戻ってる。
「おなかすかない?」
聞いてみる。
「すきましたね」
コンビニ行って来るよと両親に伝えて二人で夜食を買いに行く。
あたしは愛ちゃんに手を差し出した。
「え?」
「暗いし危ないでしょ」
遠慮がちに差し出す愛ちゃんの手をあたしはぎゅっと握った。
この手を離したくない。
いや、離すべきではないんだ。
あたしがあたしであるために。
部屋に戻ってベッドに座って話をする。
身体の一部が触れるような、そんな距離で話をする。
他愛の無い話だ。
「今度一緒にご飯行こ?」
「いいですね。何食べます?」
「パスタ?」
「あーし、いい店知ってますよ」
あたしが自分らしく生きていくために……。