4.


よしざーさんの乗ったタクシーを見送る。
あれ? なんやろ。
視界が滲むんやけど。
手を握り締めうつむく。
ぽたぽたと地面を濡らすあーしの涙。
なんでや、言うこと聞いてや、あーしの涙腺。
唇かみ締め我慢するのにアスファルトを濡らすあーしの涙は止まらん。

「高橋」

声に驚いて顔を上げるとよしざーさんが。

「よしざーさん…」
「後ろ振り返ったら高橋俯いたままマンションに入らないしさあ、降りてきちゃったよ」
「すいません…」
「高橋ってば泣き上戸?」

あえて冗談めかして言ってくれる心遣いがうれしい。

「そうかもしれないです」
「部屋まで送っていくよ」
「え?」
「ほら、いくよ?」

結局よしざーさんに部屋まで送ってもらった。
出てきたお母さんがびっくりしてる。

「すいません、わざわざ…」
「いえ、こちらこそ、遅くまですいませんでした」
「またゆっくりいらしてくださいね」
「はい、また来させていただきます」

そういってよしざーさんは手を振り、帰っていった。

自分の部屋に入り、ベッドに突っ伏した。
涙が後から後からあふれて仕方なかった。
なんで、卒業式の前の日にやさしくするんや…
つらいやん…
さよなら言うのがつらくなるやん…。



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