7.
そしていよいよ本番直前。
あたし達は気合を入れる。
あたしが差し出す左手に、一番先に手を乗せて来たのは愛ちゃんだった。
その手をあたしは思い込めて握る。
さあ、行くよ!!!
案の定、愛ちゃんは大泣きだった。
大丈夫か?てくらいの泣き方に、少々不安になる。
あたしがステージ降りてみんなが迎えてくれる中にも、
ガキさんに支えられて号泣の愛ちゃんが目に飛び込む。
「大丈夫かよ」
ガキさんから愛ちゃんを受け取り、肩を抱いて歩く。
ラストだからすぐに控え室には帰れなくて、
裏でスタッフさんに挨拶。
そのときも愛ちゃんの手を握っていた。
それが終わるとやっと控え室に帰れる。
控え室に戻った後も、すぐに簡単な打ち上げがあるからすぐに着替えなきゃいけないんだけど、
みんな放心状態でいすに座ってる。
早くしなさいってスタッフにせかされて、やっとのことでみんな動き始めるも愛ちゃんだけが
まだ何もできないで居る。
そんな愛ちゃんをミキティが覗き込んでいる。
何やら一言二言話してたかと思うと、ミキティが愛ちゃんの着替えを持ってきてあげていた。
「愛ちゃん、大丈夫?」
「あー、ごめんね、美貴ちゃん。ありがと」
「後ろのファスナー開けるね」
「うん、ありがとう」
ミキティが着替えまで手伝ってあげている。
「高橋、どうかした?」
「あー、よっちゃん」
「高橋具合悪いの?」
「泣きすぎただけだよ」
「泣きすぎただけって…」
「泣きすぎたからちょっと気持ち悪くなっちゃっただけ」
愛ちゃんの顔を見ると確かに顔色が悪い。
「よっちゃんいると、また愛ちゃん泣いちゃうでしょ? あっち行けー」
言葉は悪いけど、ミキティなりの優しさだ。
甲斐甲斐しく愛ちゃんの世話を焼くミキティを見てると、
案外このリーダーサブリーダーも上手くいくんじゃないかって思う。
お互いを思いやれる気持ちがあれば、上手く回っていくはずだ。