9.


よしざーさんが誘ってくれた。
卒業コンサートが終わって、号泣するあーしに気を使ってくれたんやろか。
確かに泣きすぎて、咽るほどに泣いちゃったせいで気持ち悪くなっちゃって
心配かけたんだけど。
それでも、よしざーさんが卒業しちゃったら
ほとんど仕事が重ならない限り会うことはないやろなってそう思ってたからうれしい。
あーしでええん?あーし以外に今日一緒にいたい人がいるんじゃない?って思ったんだけど
あーしに一緒にいようって言ってくれた。
この際、それが同情でもいい。
どうせ明日の朝が来たらそれぞれの道を歩いていくんやもん
最後の夜に一緒にいてもいいよね。
そう自分に言い聞かせて、あーしはよしざーさんの誘いを受けることにした。

会場からはそれぞれタクシーやら事務所の車で帰るんだけど、
よしざーさんはお父さんの運転する車。

「愛ちゃん、こっち」

事務所の車に乗り込もうとするあーしをよしざーさんが呼ぶ。

「え?」
「愛ちゃんは、こっちだってば」
「あ、はい…」

よしざーさんのそばに行く。

「一緒にいようって言ったでしょ?」
「うん…」
「だから、高橋はあたしんちの車で帰るんだよ」

そんな光景に先輩達が「よっちゃん、高橋お持ち帰り?」とかって冷やかしてくるけど
よしざーさんは「そうでーす」なんて余裕の表情で手を振ってる。
やっぱすごいなよしざーさんは。


走り出したよしざーさんちの車。

「眠たかったら寝ていいからね」
「大丈夫です。気が立ってるし」
「あたしもだ」

二人で笑いあう。

「ひとみが後輩を家に連れてくるのって初めてなんですよ」

よしざーさんのお母さんがそういった。

「そうなんですか」
「これからもひとみのことよろしくお願いしますね」
「いえ!こちらこそ!!」

急にかしこまるあーしに隣でよしざーさんが爆笑してる。

「そんなにわらわんでも…」
「ごめんごめん、だっておかしかったんだもん」
「だってぇ」

でも硬かった車の中の空気もそれで緩んだんだけど。


眠くないって言ってたよしざーさんだけど、それからすぐに寝ちゃって。
やっぱ疲れたんだと思う。
気もずっと張ってただろうし。

「愛ちゃん…って呼んでいいかしら」
「あ、はい!」

お母さんに話しかけられた。

「長年付き合ってきた愛ちゃんならわかると思うんだけど、ひとみは結構抱え込むタイプでね」
「そうですね…」
「でも自分がしっかりしなきゃって肩肘はってきたの」
「はい…」
「自分より年上の子には弱い面見せたりしてたみたいだけど、
あの子ももうハロプロの中でも年齢は上のほうになってきたじゃない?」
「はい」
「だから、こうやって後輩を家に連れてくるようになったってことは親としてもすごくうれしいの」
「そうなんですか…」
「ひとみが起きてるところで言ったら叱られるけどね、この子、結構甘えん坊だから」
「あら」
「だから、ひとみのこと見ててやってくださいね」
「あーし、よしざーさんに甘えてばっかりで…。あーしにできるんやろか」
「今のままでいいのよ」
「今のままで?」
「甘えん坊ってことは寂しがり屋でもある裏返しなのよ。
 一人がすきとかこの子は言ってるけどね」
「はい」
「だから、愛ちゃんが甘えてくれればそれで心は満たされてると思うわ」
「そういうもんですか…」
「そういうものよ」
「でも、あたしが卒業したらしっかりしないとだめだよってよしざーさんが…」
「それはお仕事のときの話でしょ?」
「そうですね」
「仕事離れたら…っていうか、これからお仕事が別になるわけだから頼られて悪い気はしないと思うわよ」
「はい…」
「たまには誘ってやってね」
「わかりました」

よしざーさんのお母さんと話して、よしざーさんの意外な面が知れた気がする。
隣で気持ちよさそうに眠るよしざーさんの寝顔を見つめた。



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