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仕事は意外と早めに終わった。
「よっちゃんさんどこか遊びに行くの?」
美貴ちゃんが吉澤さんに話し掛けてる。
「うん。愛ちゃんとデート」
「珍しい組合せだねえ」
「いいじゃん、たまには。愛ちゃん行こ」
吉澤さんにリードされてスタジオを後にする。
あかんなぁ、今日は私が癒してあげようと思ったのに。
「どこ行こっか」
「吉澤さんのストレスが解消されるとこ」
「ストレスたまってるように見える?」
「すっごく」
「あたし、だめだねえ、心配かけちゃって」
「そうじゃなくて!」
私が急に大きな声を出したから、吉澤さんが驚いたように私を見た。
「メンバーの前で隠して演じるんやなくて、もっと吐き出してください」
「ちっちゃい子達の前でそれは無理だよ」
「そうやのうて」
「ん?」
「私に吐き出してください」
「愛ちゃんに?」
「頼りないかもしれんけど、でも、受け止めきる自信あります!」
本当は自信なんてひとっつもあれへんけど、
目の前の吉澤さんがあまりにもはかなげで、そう言い切った。
吉澤さんはふっと口の端に笑を浮かべると
「じゃあ愛ちゃん家行きたい」
そう言った。
家に着いて、私は吉澤さんのために雑炊を作った。
「今日は雑炊?」
「今日吉澤さん、胃が痛いって言ってたから」
「ありがと。気が効くね」
「後でマッサージしてあげます」
食事の終わった吉澤さんの腰をマッサージしてあげた。
吉澤さんは気持ちいいって喜んでくれた。
「少しは胃、楽になりました?」
「うん」
昼間とは全然違う笑顔になった。
「ねえ愛ちゃん」
「はい」
「抱っこして寝ていい?」
恥ずかしそうにそう言う吉澤さんがすごくかわいかった。
シャワーを浴びて、化粧を落として…。
素顔の吉澤さんが綺麗で見とれてしまって…。
「見るなよぉ、恥ずかしいじゃん」
腕の中に閉じ込められてしまった。
「だって綺麗なんやもん」
「愛ちゃんだって」
「私はだめ。素顔なんて見せれん」
そう言うと吉澤さんの腕の力がふっと緩んだ。
顔を上げるとじーっと吉澤さんが見ていた。
「かわいいじゃん、やっぱり」
「ばかぁ」
それから、吉澤さんは仕事に行き詰まると私の家に来るようになった。